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苦笑を交えながら、腕を稜太郎の背中に回して、ゆっくりと撫でさする。
「さすがに頭を撫でたって聞かされたらさ、冷静じゃあいられねえよ」
「あ、それは」
三田村に頭を撫でられた経緯を話す。悠希が恋人を大切にしていることを褒めただけという真相を知った稜太郎は、がっくりと肩を落とした。
「なんだよそれ……」
「だから稜太郎が嫉妬する必要なんてないんだよ」
微笑みながら、艶のある黒髪をあやすように撫でる。何度か撫でているうちに不揃いな髪の長さが気になった。親指と人差し指で髪の毛を擦るように触りながら、そろそろカットしても良いかもしれないとぼんやり思う。カットすることはいつだって楽しい。そのなかでも稜太郎の髪を整えるのは特別だった。好きな人の髪にずっと触っていられるのは自分だけの特権だから。
そのとき、稜太郎から言われた「頭撫でさせたんだろ?」という殺気立った顔が頭をよぎった。もしも稜太郎の髪を誰かが触ったら? 仕事ならば仕方ないと諦めもつく。けれどもそれがプライベートの場だったら。その光景を想像しただけで胸が苦しくなった。
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