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次回の公休日前に、との約束で花火はお預けとされた。少し気落ちしたが、楽しみができたと言われ復活した。次回までに、新たな追加オプションを考えておくつもりだ。
その後は少し海と戯れ、身体中に砂をつけて帰宅した。
「楽しかったね~!」
「びっちゃびちゃ……先にお風呂行ってきなよ」
玄関にて、念入りに砂を落とす。海の残り香が、まだほんのりと漂っている。
しかし、既に夢だったのではと疑えるほど、遠い記憶と化していた。電灯には、現実に連れ帰る魔力があるのかもしれない。
どことなくもの寂しい感覚を、早急に塗り潰したくなった。
「あっ! 水風呂しようよ! 水着着て一緒に入ろうよ! いいでしょ!」
「うん、いいよ」
今日はまだまだ終わらないのだから。最後まで、目一杯楽しんでやらねば。
水風呂は柚が準備してくれた。涼海にやらせると、水しか入れなさそうだからと言われた。寧ろ他の入れ方が分からず、私は水着発掘係となった。
押し入れの中には、見慣れた美しさがある。整った配置に、分かりやすいタグ。隅まで管理された個室は、物置と呼ぶには少し違和感があるくらいだ。
しかし、そんな場所だからこそ、共有物もよく見える。入居直後より格段に増えた物品に、今日何度めかの笑顔が零れてきた。
これから先、この部屋が"物置き"となるまで――いや、その先も共にいたい。
完璧な柚の手により、風呂場はちょっぴり特別な空間になっていた。冷えた麦茶が用意されており、アロマキャンドルまである。柑橘の爽やかな香りが、リラックスを連れてきた。
なんと言っても最大の魅力は、消灯による贅沢感の演出だろう。優しく揺れる炎は、私に再び夢を見させた。
快適な水温に、火照った体が馴染む。暑さの緩和に、麦茶も一役買ってくれた。肌を沿わせながら、ただ無言で空間を楽しんだ。
最終的には、寝落ちしかけて起こされたが。
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