鳴き声

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   幸助は私立高校の1年生。今年の春に高校生になったばかりだ。去年度は高校受験を頑張って、その結果、私立高校に入る事ができた。苦労した分、高校では楽しい日々ができた。あっという間にたくさんの友達ができ、充実した高校生活を送っている。  午後4時半過ぎ、幸助は学校を終えて家に帰宅しようとした。家までは数十分。毎日大変だけど、自分で選んだ道だ。耐えよう。 「じゃあね」 「バイバーイ!」  幸助は友達と別れ、家に向かった。ここからは1人で帰る。中学校と違い、少し寂しいけれど、次第に慣れてきた。  幸助は田園地帯の中を一直線に続く道を走っていた。とても心地よい。  幸助は信号で立ち止まった。この交差点は少し待ち時間が長い。早く青にならないかな? 幸助はそわそわしていた。  幸助がふと道路わきの雑草に目をやると、1枚のカセットが落ちていた。そのカセットは黒いケースだ。 「ん? 何だこのカセット」  幸助は興味を持って、そのカセットを手に取った。家に帰って、試しに聞いてみよう。どんな内容だろう。わくわくする。  30分後、幸助は家に帰ってきた。幸助の家は1件家で、広い庭がある。家には1台の軽自動車がある。母の車だ。  幸助は物置に自転車を置いた。物置には農作業で使う道具が置かれている。 「ただいまー」 「おかえりー」  幸助は家に入った。家には母がいる。母はダイニングで晩ごはんを作っている。今日はカレーのようで、おいしそうなカレーのにおいがする。  幸助は2階の自分の部屋に入った。今日も1日、授業を頑張った。今日はゆっくりして、明日に備えよう。  幸助はラジカセにカセットをセットし、そのカセットを聞いた。幸助はベッドに仰向けになり、カセットを聞く事にした。 「このカセット、一体何だろうな」  しばらくすると、カセットから変な声が聞こえる。その声は、現実で聞いた事のない声ばかりだ。 「グルルル・・・」 「何だこの鳴き声」  何かのうめき声だ。一体何の鳴き声だろう。全く思い浮かばない。 「ゴォォォォー!」 「炎?」  幸助は驚いた。炎を吐いている音だ。まるで怪獣のようだ。何だこのカセットは。 「ガオー!」 「怪獣?」  怪獣の声だろうか? 怪獣何てこの世界にはいない。特撮やアニメだけの世界だ。ひょっとして、特撮化アニメの声だろうか?  次第に幸助は眠ってしまった。幸助は変な夢を見た。まるで恐竜のいた白亜紀のような世界だ。この夢の世界は何だろう。幸助は首をかしげた。 「あれっ、ここは?」  幸助は気づくと、鳥の巣の前にいた。だが、巣の中にいるのは鳥ではなく、コウモリのような羽の生えたトカゲだ。ファンタジーによく出てくる、ドラゴンだ。まだ赤ん坊のようだ。とても小さい。 「キュー、キュー」  ドラゴンの赤ん坊たちは可愛らしい鳴き声だ。えさを求めているようだ。 「えっ、ドラゴン?」  ふと、幸助は手を見た。すると、ワニのような鋭い爪だ。ひょっとして、自分がドラゴンになっているのかな? 「えっ、手が?」  信じられない。自分が夢の中でドラゴンになっている。だとすると、あのカセットを聞くと、ドラゴンになる夢を見るんだろうか?  と、自分の体が上がっているのを感じる。何かを感じて振り向くと、羽を広げて空を飛んでいる。幸助は夢の中でドラゴンになっている自分の姿を確認した。 「えっ、空を飛べる?」  幸助は驚いた。まさか、自分がドラゴンになっているとは。空を飛べるなんて。夢だとはいえ、びっくりだ。 「幸助ー、ごはんよー」  突然、母の声が聞こえた。晩ごはんができたようだ。幸助はベッドから起き、1階に向かった。だが、尻に違和感がある。何だろう。 「はーい」  幸助は部屋から出てきた。早く1階に行こう。今日はカレーだ。 「どうしたの? うなされていたわよ」  母は心配している。ずっとうなされている声が聞こえた。どんな夢を見ていたんだろう。とても気になる。 「何でもないよ」  幸助は焦っていた。夢の事は話したくない。 「そう。って、その尻尾、何?」  突然、母は幸助のジーパンからはみ出した尻尾が気になった。その尻尾は赤く、まるでトカゲのようだ。 「えっ!?」  幸助は驚いて、尻を見た。すると、ジーパンからドラゴンの尻尾が出ている。まさか、あの夢の影響だろうか?
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