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オープニングライブは平均30〜40分で終了。曲の長さにもよるけど五曲前後披露して終わりだ。今回のロスチャイもMJのメドレーにオリジナル二曲を盛り込みエンディングへと向かう。短くも濃厚な時間だった。
「俺、この人達のライブも行ってみたいっちゃー」
「うんうん。でも西川くんは毎回出ないと思うぞー。千秋楽とかならともかく。ね、東海林さん」
「そうですね。出来る限りのバックアップは考えますが、彼らには天羽との抱き合わせではなく単独で頑張って貰わないと。天羽の情け容赦ないスパルタ教育で実力も確実にレベルアップしてますから」
「是非ともグラミーに乗り込んで頂きたいです」
「ふっ⋯⋯ふふふふふふ」
東海林さんがこんな風に笑うなんて珍しい。期待の顕れかな。
曲は一周回ってまたアンセム。これで締めだ。名残惜しくはあるが西川くんのアレンジ&ギター演奏はそれはもうカッコいい。今年の映像がDVD化&配信されたらまたタイチが炬燵部屋でエンドレスリピートだな。俺も楽しみだ。
さて、引き揚げる準備だ。俺は明日から始まる各競技本戦巡りと自分のトレーニングに備え早めに休むのだ。後片付けはローレスの皆さんにお任せだ。
ヨシ、スタジアムも照明全開。観客の皆さん、風邪ひかないように帰ってね! そんで応援もよろしくね!
「タイチそろそろ、」
─────
─────
⋯⋯⋯⋯ん? んん?
EXのオープニングにアンコールは無い。
まるで宝塚歌劇団の公演終了時の如く(東海林さん談)ステージが終われば演者はアッサリ去り、その後はモニターに流れる競技紹介とダイジェスト映像を観ながら観客もザーッと帰って行くのが常だ。オープニングアクトはあくまで前座で、主役はEXのライダー達だからって事でどんなアーティストを呼んでもそこは敢えての構成にしてきた。
だが確かに聞こえる手拍子⋯⋯アンコール、だ。
煌々としたステージに視線を移すとセリが下がっている。ぽっかり穴が空いている。なんだどうした、リハーサルではこんなのなかったぞ。何かトラブルでもあったのか。
不安に駆られているとセリが上がって来た。人の頭⋯⋯
白いキーボード、いや、デジタルピアノを前に腰掛けた白シャツ白パンツの西川くんと白いソファの隣で白いベンチコートに身を包んだロジャーが両手を振りながら登場した。
「えええ!」
会場はまた湧き上がるが俺は知らんぞこんな演出。一切聞いてないぞ。俺、これでもオープニングイベントの総合演出って肩書きあるんだけど!
〈〈ビッグオーのみんな〜〜! ありがとね〜〜☆〉〉
俺の驚愕っぷりを他所に西川くんはクワタケイスケ氏か! って調子で観客を煽る。マイクもしっかり通っている。ロジャーも投げキッスを飛ばしまくってノリノリだ。なんだ、マジでどうした! 二人ともどうした!
〈〈みんな、あと一曲だけ。僕らの大切な友人のために時間をちょーだい〉〉
!!!!!
うわー⋯⋯⋯⋯コレ、コレってまさか。
〈〈このEXが最後になるキタガワシュウ〉〉
ギャ─────!!
〈〈もっかいステージにきて〜〜!〉〉
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