EXTREMES'21

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  「喜多川(きたがわ)さんにとってEXTREMESとは?」  インタビュアーはエッジエンタープライズのアイドルくん。  五輪関連のアンバサダーを引っ張り出すあたり、この企画のプロデューサー西川くんの本気度が垣間見える。俺の最後の花道を飾る『序章』にかなり力を入れてくれているもよう。  なので俺はしっかりと背筋を伸ばし、年相応の紳士的な微笑みをキープしながら努めて丁寧に答える。 「ライフワークですね。僕を長年支えてくれたひとつの “柱” であることは間違いないです」 「主催者のロジャーさんは今大会を最後にEXから退く喜多川さんに向けて “彼無しではEXはここまで成長しなかった” と発信しておられますね」 「僕の方がEXへのチャレンジの中で成長させて貰ってるんですけどね」  EXの開催種目は時代に沿ってマイナーチェンジを繰り返したけれど、“帝王ロジャーの競技” であるハーフパイプはいつだって花形。イベントのトリを飾ってきた。俺が注目されたのもロジャーの謂わば引き立て役だったからだ。  2016年、初めてロジャーを越えた─────あの夜まで。  以来ずっと守ってきたEX絶対王者の称号は俺の誇り。  今大会がどうなるかは解らないけれど。 「最後のEXTREMESに賭ける意気込みを聞かせて頂けますか」 「いつも通りです。自分のベストを尽くして飛んで回って。僕にはそれしか出来ませんから」 「いつも通りの喜多川さんで」 「はい。それに僕はこの先もEXって言うイベントには関わり続けて行きますし、後輩達のチャレンジを応援したいって思ってます。最後と言っても最後じゃないんですよ」 「喜多川さんが伝説になる瞬間、楽しみにしてます」  伝説。  ロジャーは俺とタイチに負けて伝説になった。  王座を継承し、潔く去って行った大きな背中は美しかった。誰より輝いていた。  俺もそうありたいって思う。
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