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曲が変わる。
ゾンビ達がカクカクしながら捌けて行ったステージ上では赤い衣装のMJ達が全く同じ振りで一糸乱れぬキレッキレダンスを繰り広げる。伝説のステージのコピーはそれはもう見事で、八人がハットを同じ角度で飛ばすと観客も一層盛り上がる。
「西川くんのモータウン愛がほとばしってますねー! 完成度が凄い!」
「それはもう⋯⋯!メンバー達も天羽の我儘放題の指令によくここまで着いて来てくれました⋯⋯!」
「泣かないでください」
「喜多川さんにも感謝しています。チャレンジだらけの演出を天羽に任せて頂いて」
「信頼してますもん。西川くんは」
「「アタリしか引かない」」
タイチはレオナルド達と共に生ムーンウォーク×8に大興奮だな。無邪気に目をおっきくして子どもみたいだ。
そして、八人がゆっくりと、円を縮めるように中央へと集まる。ステージ上を這うようなスモークの色も赤紫から青のグラデーションに変わる。ここからはロスチャイのオリジナル曲、つまりは西川くんの曲だ。ソウルミュージックをベースにしたラッパ隊(←西川くん曰く)の軽妙なイントロ、そこはかとないカッティングギターの音色がカッコいいんだなー。
が。
「止まった⋯⋯」
曲のブレイクと共に動きをピタっと止めた八人はフリーズチャレンジの如く微動だにしない。そしてシャカシャカ掻き鳴らされる渇いたギターの音に絡むドラムスが遠くから近づいてくる。ズンズン、ズンズン、ズンズン⋯⋯
そしてズン! と耳に再接近したと同時に特殊効果の火花と紙吹雪が噴き出し、ステージがライトで真っ白になる。銀色の紙吹雪⋯⋯キラキラと雪みたいに綺麗だ。
コマ送りのようにも感じるそのキラキラの中、八人の輪の中心からは─────ギターを抱えた西川くんがブルーハーツのヒ□ト氏ばりのジャンプで飛び出して来た。それを合図に大音量の音楽とダンスが再び弾ける。
「ギャ───! 西川さんキタ───!!」
タイチの叫びなど瞬時に呑み込む勢いで物凄い歓声に押される! スタジアム中が湧きに湧いて止まらない。隣の東海林さんの嗚咽も止まらない。この人の西川くん愛はマジで凄い。俺も見習いたい。
つーか西川くん、ジャンプできんじゃん。
普段はスポーツはやるものじゃなく観るもの! と言い張り、東海林さんオススメのトレーニングから逃げ回ってばっかりなのに。でもまー時々スノボで見せる軽快な滑りには運動神経の良さが垣間見えていたし、そもそもの基礎体力がなきゃライブで何時間も歌ったり演奏したり出来ないよなあ。
能ある鷹は爪を隠すってことだなウンウン。
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