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嫌だ俺は行かんぞ、つーか腰が抜けそうで椅子から立ち上がれんぞ。
などとぐるぐるしていたら右に居たタイチが俺の腕をぐっと掴む。そしてなんかオレンジ色の塊が動いたと思ったら左腕をホールドされた。ローレスのスタッフコートを着た雄大!
「なんだ!」
「ロジャーと西川さんのご指名っちゃ。行くよ柊にーちゃん」
「え、え、ええええ」
両脇を大男に抱えられ、俺の体は宙に浮いた。そして特設アリーナに座っていた筈のライダー達が笑顔で道を作っている。ステージまで真っ直ぐ、花道のように。
抵抗すら出来ないまま大股で進むタイチと雄大に連行される。聞こえるのは歓声、手拍子、そして『シュウ』と『Thank you』『I love you』の嵐⋯⋯⋯⋯
ステージ際にはFlyHighのみんなが居た。ヨーコさんが、才賀さんが、俺の仲間達が─────笑顔で舞台上へ促す。
最早歓声も耳に届かないほど心拍を上げながらステージに立つとスタジアム側の照明が消える。眩しいのはステージの上だけ。そこではロジャーが青いバラのでっかい花束を抱えて待っていた。青⋯⋯いや、ラピスラズリ色のバラ⋯⋯
白い空間に浮き上がるような俺の色─────
「僕らの絶対王者に感謝と敬意を込めて」
「ロジャー⋯⋯なんで」
「サプライズって素敵だよねー」
「こんな⋯⋯⋯⋯大規模のサプライズ⋯⋯⋯⋯勘弁して⋯⋯⋯⋯」
「ホラ、座って座って!」
花束を抱え座らされたソファから見えるのは暗いスタジアムに浮かぶ青色のサイリウム。宝石箱をひっくり返したような⋯⋯まるでラピスラズリの海だ。
三万人の観客。世界中から集ったライダー達。俺の愛する、俺の命の、俺が二十年掛けて築き上げ繋がってきた仲間達が─────
〈〈柊ちゃん、きみの為に歌うからね〜〜〉〉
白いピアノが奏でるイントロは何度も聴いてきた。西川くんが事あるごとに弾き語りしてくれたキャロル・キングの “ You've Got a Friend” ───── “きみのともだち”
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