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─────そしてここで、この番組内で使用された沢山の過去映像と共に流れてくる西川くんの歌声、シビれるJIBの演奏⋯⋯⋯⋯これぞ王道のエンディング。
「感動のドキュメンタリー⋯⋯!」
タイチは目をウルウルさせ、パソコンのモニターに向かってパチパチ拍手する。
「なんかスゲーな。グリーンバックのスタジオ撮影だったんだけどなー」
「このインタビュアーの人見たことある」
「おまえ一緒にCM出てただろーが。N食品のカップ麺、時代劇編」
「言われてみれば!」
相変わらず適当なヤツだ。
まあ何にしたって2020ー2021シーズン中盤最大のイベントはもうすぐそこ。明日モントリオールへ移動したらバンクーバーに帰ってくるのは半月以上先だ。
「ホラもう寝るぞ」
「もっかい再生したい。スーツでジェントルな柊が素敵過ぎてもうっ⋯⋯♡」
「現物がココにいるのに画面の中の俺に心奪われるなっ」
「だって抱けないし」
タイチはクッションをぎゅーっと抱きしめ顔を埋める。
今季EXを前に安藤さんチェックは殊の外厳しく、愛の営みが長いことお預け状態になっているから致し方ないが。
暖炉の淡い炎とオレンジ色の照明に照らされるタイチの黒髪をくしゃくしゃ撫でつけると、更に頭部がクッションにめり込んで行く。
「お手」
「⋯⋯⋯⋯わん」
手だけはちゃんと俺の掌に載って来るが、暴走しないよう控えめな接触なところが可愛い。
「EXが終わったらいっぱい愛し合おうな」
「世界選手権がある⋯⋯」
「んなもん三月だろがっ」
「だって⋯⋯」
悲しい話ながら、年々体のリカバリーに時間が掛かるようになって来ているのはもう避けようがない現実なのだ。三十を過ぎてからマジでマジで疲労回復力が衰えてきた自覚がある。気合いとアドレナリンで何とかするには若さが足りんのだ。認めたくはないが。
そもそも男の体は抱かれる仕様じゃないからそれでなくとも負担が大きい。長時間移動前、性欲に流され無茶をすれば下手すると三日くらい不調になったりする。
「大体おまえのがデカいのが悪い」
「えええ⋯⋯⋯⋯」
「俺も我慢してやってんだからおまえも我慢でトントンだ」
「柊は我慢してるように見えんもん⋯⋯⋯⋯」
「んなワケあるか。いつだってウズウズしとるわ」
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