断捨離

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 断捨離をすることにした。  カメラを捨てる。スマホのカメラで事足りるからだ。  メモ帳を捨てる。スマホのメモ帳で事足りるからだ。  日記帳を捨てる。スマホの日記アプリで事足りるからだ。  CDを捨てる。スマホのサブスクで事足りるからだ。  結構な量になった。ゴミ袋を持ち上げるとがしゃんと音がした。  捨てる前に、ゴミ袋の中をもう一度見る。なにか間違えて捨てていないか確認するためだ。  CDを手に取る。  あの頃、わくわくしながら初めてのお小遣いで買ったCDだった。もう解散してしまった、大好きなバンド。このCDの価値はいくらくらいだろう。  日記帳を手に取る。  日記をつけようと初めて買った日記帳だった。母と一緒に行ったデパートで買ったんだった。ページを捲ると、案の定一週間で終わっている。それでも、書き続けようとした意思はそこにある。  メモ帳を手に取る。  閉店した文房具屋で、目をキラキラさせながら買ったキャラもののメモ帳だ。日光が当たっていたのか日焼けしてしまっている。あの頃は、可愛い文房具を持っている者が正義だった。  カメラを手に取る。  電源ボタンを押しても画面には何もつかない。バッテリーが切れているのだ。私がまだ小さかった頃、父親が誕生日プレゼントで買ってくれたものだった。これでたくさんのものを取った。風景。食べ物。大好きな家族。  捨てようとしていたはずなのに、彼らからは思い出が溢れてきて、私をあの頃へと引き戻そうとする。その力によって私の両目からは涙が零れだす。  なんだ、捨てられないじゃないか。断捨離なんかやめだやめ。ティッシュで涙を拭う。  もうしばらく、この物たちと過ごすことになりそうだ。
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