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小さくため息を漏らしながら漣をジトリと睨みつけても彼女は不思議そうに首を傾げるだけだ。
「お前の彼氏に見つかったら殺されそ」
いつも漣と行動を共にする男を思い出しながらそういえば彼女はさらに不思議そうに優太を見つめる。
「え、彼氏? いないけど、僕」
「は?あのゴツい中国人、お前の彼氏だろ」
「鹹蛋?違う違う、友達だよ。可愛い僕のお友達」
語尾にハートがつく勢いでそういう漣だが正直信じられないぞ、お前。と疑いの眼差しを向ければ彼女は気にした様子もなくケラケラと笑った。
夕暮れが丁度漣を照らすものだからその瞳が向こう側の暗い空と相まって、満月に見えたが気にした様子もなく歩き出してしまう。少し、不気味だと思ってしまったのは申し訳ない。
「ていうか、なんでそんなこと思われてんの?僕絶賛フリーなんだけど」
「あんなに距離近かったらそう思うやつもいるだろ」
お前らが悪いって。と言いながら漣を見ればまた声をあげてあっけらかんと笑って見せるんだからもう何もいえない。
二人揃って帰り道を歩いていればどこからか、何かを引きずるような音が聞こえてきた。布が、擦れる音に振り返っても、特に何もない。
気のせいか、とまた前を向いて歩き出せば次は足音が聞こえてくる。それがなんだか不気味で勢いよく振り返っても、やはり何もない。いない。一体、何か。
「どうかした?」
「え、あー……多分、気のせい」
自分に言い聞かせるように呟きながら振り返ればズボンのポケットが揺れた。低い振動音に少し驚いて短い声をあげれば漣に笑われた。
何やってんだか、ただの携帯のバイブじゃないか。自身に呆れながら優太は携帯の画面を見つめて眉を顰めた。
「メール?」
「ばあちゃんから。本当に鬱陶しい。
高二にもなって門限にうるっせぇの」
面倒臭くて思わずため息を漏らせば、彼女も画面を覗き込んでくる。見せるように画面を傾ければ彼女は目をぱちくりとさせる。
「優しいじゃん。君のこと心配なんだよ」
「それがうざいっての。
漣はいいよな、親が家にいないってことは自由じゃん。うっらやまし〜」
あはは、と笑って携帯をポケットに入れて歩き出せば漣はその後ろからついてくる。
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