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だが、さらにその奥から何かを引きずる音と足音が同時に聞こえてくる。漣も気にしないのだから気にしても仕方がないだろう。そう、気のせいだ。疲れてるから、風の音がそういうふうに聞こえるんだ。そう思いながら、いや自分に言い聞かせながら気にしないようにする。だが、それでも気になってしまって振り返る。
携帯を触る漣が、怪訝そうに眉を顰める彼女に思わず息を飲めば「なに」と不機嫌そうな声を漏らされてしまった。
「君、さっきから変だけど。後ろに何かいるの?」
「いや……聞こえないの、お前……」
「聞こえないって、何が。
お前そういうとこあるよね。イライラするからはっきり言えば?」
はぁ、と呆れたようにため息を漏らす漣に思わず肩を震わせた。なんでこいつ不機嫌なの?わっかんねーの、女子って。と思いながらもそれでも聞こえてくる何かを引きずる音に息を呑む。
「何か、引きずる音……」
「………あぁ、キミもしかしてビビってんの?ヤマセンとか、知ってる人が殺される事件のニュースばっか見てるからだよ」
ほんとバカ。と言いながら面倒臭そうに携帯の画面を見せつけてきた。どうやら、去年の夏に行方不明になった中学の同期の女子の捜索が打ち切られるという物だった。
「結局見つかったのは左腕だけだったんだ。ウケる」
「ウケねぇよ……俺そんなビビってるかな……」
「あとホラーゲームのしすぎ」
「はぁ!?お前にだけは言われたくないんだけど」
先へと歩いていく漣が歩き去っていくのを見てもう一度後ろを振り返る。もう太陽が消えて、暗くなりそうなのにここら一帯は今になっても電灯がつかない。本当に不便だ、と思いながらもそれ以上に暗闇に何かを隠れているように見えて恐怖心が煽られる。
慌てて漣を追いかければ彼女はまた面倒臭そうな顔をして曲がり角で待っていてくれていた。そういうところは優しいんだよな、と思えばまた足を蹴られた。
ほんと、そういうとこだよ、と思っていれば少しだけ急ぐような足音が聞こえて振り返ると、キャリーケースを引きずったサラリーマンが目の前を横切って行った。
「おまえが聞いた音ってあれじゃないの」
「………ほんと、俺ちょっと当分はホラー系のゲームとか映画見ないようにするわ……」
「ほんっとばっかじゃん……」
ほら行くよ、と言って歩き出す彼女に言われて歩き出したところで、金属音が聞こえた。
本当に、ゲームのしすぎ
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