ルルの危険な野望(4)

1/1
43人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ

ルルの危険な野望(4)

「ごめんなさい、ご主人様ぁぁ〜!」  ご主人様に抱きついて、彼の肩に顔を伏せて、固く抱きしめる。  突然の涙の抱擁に、彼は少しうろたえたようだったが、僕の頭を優しく撫ぜてきた。 「何だ? 一体どうしたんだ? ルルは甘えん坊だなぁ」 「行きます! エーゲ海でもどこでも!」 「よしよし。泣くほど嬉しかったのか」  感極まって泣いている僕の背中を、ご主人様が軽くトントンと叩いた。  涙の意味を勘違いしているかもしれない……。  ご主人様を抱きしめて、僕は心に誓った。  大好きな彼に、フランクフルトを突っ込むなんて出来ない。  やっぱり、ちゃんとした夜の玩具を準備してあげなくては。  そのまま二人でベットインし、目が覚めたのは夕方だった。  目が覚めたとき、ご主人様の姿はすでに布団にはなかった。  しまった、夕食を作るのを忘れていた。  買い物袋は、そのまま床に放り出してしまったはずだ。  慌てて起きて、身づくろいをする。  台所に向かうために、居間を通りがかった。  見ればご主人様は居間のテーブルについて、見覚えのあるものを食べている。 「あ、それは……」  思わず、僕はぽかんとしてしまった。 「それ、ご主人様が作ったんですか?」 「ああ。お腹が空いたけどルルが寝ていたから、自分で作ったんだ。ルルの分もあるよ」  テーブルについた僕の前に、料理の皿が置かれる。  それはじゃがいもとフランクフルトの、オリーブオイル炒めだった。 (ルルの危険な野望/終)
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!