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ルルの危険な野望(4)
「ごめんなさい、ご主人様ぁぁ〜!」
ご主人様に抱きついて、彼の肩に顔を伏せて、固く抱きしめる。
突然の涙の抱擁に、彼は少しうろたえたようだったが、僕の頭を優しく撫ぜてきた。
「何だ? 一体どうしたんだ? ルルは甘えん坊だなぁ」
「行きます! エーゲ海でもどこでも!」
「よしよし。泣くほど嬉しかったのか」
感極まって泣いている僕の背中を、ご主人様が軽くトントンと叩いた。
涙の意味を勘違いしているかもしれない……。
ご主人様を抱きしめて、僕は心に誓った。
大好きな彼に、フランクフルトを突っ込むなんて出来ない。
やっぱり、ちゃんとした夜の玩具を準備してあげなくては。
そのまま二人でベットインし、目が覚めたのは夕方だった。
目が覚めたとき、ご主人様の姿はすでに布団にはなかった。
しまった、夕食を作るのを忘れていた。
買い物袋は、そのまま床に放り出してしまったはずだ。
慌てて起きて、身づくろいをする。
台所に向かうために、居間を通りがかった。
見ればご主人様は居間のテーブルについて、見覚えのあるものを食べている。
「あ、それは……」
思わず、僕はぽかんとしてしまった。
「それ、ご主人様が作ったんですか?」
「ああ。お腹が空いたけどルルが寝ていたから、自分で作ったんだ。ルルの分もあるよ」
テーブルについた僕の前に、料理の皿が置かれる。
それはじゃがいもとフランクフルトの、オリーブオイル炒めだった。
(ルルの危険な野望/終)
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