5人が本棚に入れています
本棚に追加
「その、半助豆腐はタダにしますんで……ね?」
「まあ、分かりました」
へこへこと頭を下げる店主に了承する。口止めは構わないが、もったいない。これだけの味なら、さぞかし人気店となるだろうに。
「それじゃ、お代金は四千円です」
「一万円でお願いします」
「……へい毎度っ!」
おつりを受け取り、幸せな気持ちで席を立つ。
「ありあとやしたーっ!」
店主の嬉しそうな声に、青年は顔をほころばせた。あんなに旨いうなぎを食べさせてもらったのだから、こちらこそ礼を言いたいものだ。
「……ふう」
不思議な屋台だった。色々と突っ込みたいところはあるが、兎にも角にも旨かった。大満足だ。
もしまた眠れない夜が来たら、今夜のように外へ出てみるのもいいかもしれない。
煙の匂いを纏いながら、青年は帰路につく。
たくさん汗をかいたせいか、夜風が涼しく感じる。
「ああ、いい気分だ」
今度は、ぐっすり眠れそうだと思った。
最初のコメントを投稿しよう!