丁夜に煙る

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「その、半助豆腐はタダにしますんで……ね?」 「まあ、分かりました」  へこへこと頭を下げる店主に了承する。口止めは構わないが、もったいない。これだけの味なら、さぞかし人気店となるだろうに。 「それじゃ、お代金は四千円です」 「一万円でお願いします」 「……へい毎度っ!」  おつりを受け取り、幸せな気持ちで席を立つ。 「ありあとやしたーっ!」  店主の嬉しそうな声に、青年は顔をほころばせた。あんなに旨いうなぎを食べさせてもらったのだから、こちらこそ礼を言いたいものだ。 「……ふう」  不思議な屋台だった。色々と突っ込みたいところはあるが、兎にも角にも旨かった。大満足だ。  もしまた眠れない夜が来たら、今夜のように外へ出てみるのもいいかもしれない。  煙の匂いを纏いながら、青年は帰路につく。  たくさん汗をかいたせいか、夜風が涼しく感じる。 「ああ、いい気分だ」  今度は、ぐっすり眠れそうだと思った。
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