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(役に立たないどころか、現在進行形で私の天使ちゃんの恋路を邪魔することになるなんて……。ああもうやんなっちゃうわ……。せめてもう少しこれを……ダメ、眠くて何が書いてあるのか全然頭に入ってこないわ)
今日も今日とて、エマは夜更かし。追いつかない妃教育をどうにかするべく、外交用の資料を読んでいたが、眠気には勝てない。東の国についての資料を放り投げ、目頭を揉む。
(ああ、今夜は東の国では七夕だったっけ)
あちらではこの時期、「笹」に「短冊」と呼ばれるものを結びつけて神さまに願い事をするという行事があるらしい。なんでも離れ離れになっている男神と女神が、年に一度の逢瀬を交わすらしく、その際に人々の願い事を叶えてくれるのだという。
(1年に1回しか好きなひとに会えないから、気持ちが爆上がりで幸せのおすそ分けをしてくれるってこと?)
首を傾げつつ、エマは願い事を書いた。現状があまりにも手詰まりのため、神頼みに逃げたとも言う。
王国内では笹とやらは手に入らないので、部屋の中の観葉植物を代役にした。
(『短冊』ねえ。願い事を叶えて欲しいから、誤解がないように具体的にお願いをしておきますか)
そして小さなメッセージカードの裏表に、みっちりと義妹への愛と睡眠不足の恨みつらみが記載された、ある意味呪いの手紙のような「短冊もどき」が飾られることとなった。
(本当に不思議。なんだか今日は心安らかにぐっすり休めるような気がする……おやすみなさい)
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