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「ところで、お嬢さま」
「なあに?」
「国王陛下とのお話で、『願いはほぼ叶った』とおっしゃっていましたが、どうして『ほぼ』なのでしょうか。何か足りないものが?」
「ああ、それねえ。そこ、聞いちゃう?」
「はい、よろしければお聞かせください」
死屍累々の魔物たち。そこに突然漂う若干桃色めいた雰囲気に、好機と見たのか一斉に襲いかかる。
「実は私、あとひとつ願い事を書いていたの」
「元婚約者さまと妹君との結婚、睡眠不足の解消、魔法の出力アップのほかに、ですか?」
「あ、欲張りだなあって思ったでしょ」
「いえいえ、ご自分の欲しいものの一番目に『睡眠不足の解消』を書かれるお嬢さまが、一体何をお願いされたのか、興味があるだけです」
「素敵な旦那さま」
「はい?」
「素敵な旦那さまがほしいって書いたのよ。婚約解消は私から望んだことだし、それについて後悔なんてないけれど、やっぱり私も愛し愛されてみたいなあと思ったから。でもこればかりはひとりではどうにもできないことだし、やっぱり難しいみたいね」
「そうでしょうか」
「ええ、そうよ」
「では、僕などいかがでしょう」
「へ?」
ぽかんとするエマの手を、従者が握りしめた。
なお、ふたりの周りではなおも魔物がひしめいている。エマは無詠唱魔術で、リーバイは魔力を込めた蹴りで周囲をなぎ払った。
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