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「お嬢さまの幸せだけをずっと願っておりましたが、叶うならばその幸せを僕自身があなたに贈りたいのです。どうぞ、あなたの隣に立つことをお許しいただけないでしょうか」
「……いつから、そういうこと考えていたの?」
「あなたに初めて会ったあの時からですよ。15年待って、ようやく告白できました。あの頃は、お嫁に行くあなたを見守ることしかできないただの子どもでしたから」
リーバイは少しほろ苦い顔をして笑った。
「断ったら、どうするつもり?」
「素知らぬふりをして、このままお仕えいたします」
「私が誰か別のひとと結婚しても?」
「血の涙を流しながらお仕えしますので、どうぞご心配なく」
「目から血が出ていたら、心配しないわけなくない?」
「お嬢さまにお気遣いいただき、大変嬉しゅうございます」
「いや、ポジティブ過ぎ」
「ポジティブですよ。お嬢さまが眠っていらっしゃる間に、年齢と実力をあげることができると思っていたくらいですから」
「そこはちゃんと目が覚めるか心配してほしいんだけど?」
「すみません」
ナチュラルにイチャイチャするふたりの周りで、魔物たちの悲鳴が響き渡る。もちろん黄色い悲鳴ではなく、断末魔である。
「でも、僕はやっかいなお貴族さまをほどほどに蹴散らすことができますし、平民暮らしについてもよく知っております。ですので、お嬢さまにお気楽な平民風の生活をご用意できます。睡眠不足にもさせません」
「くっ、魅力的だわ!」
「それに公爵家の身分を捨ててしまうと、逆に義妹さまや甥っ子さま、姪っ子さまに会いにくくなりますよ」
「あ、それはダメね」
「そうでしょう、そうでしょう。さあ、どうですか。今ならとってもお買い得です」
自身のスペックよりも義妹や甥っ子、姪っ子を優先されたことにむしろ納得しながら、リーバイはエマを見つめる。
「うーん、そう考えるとまあいいっちゃいいかも? でもさあ、じゃあなんで私の側にいたいの? 私のどこが好きになったの?」
「それはですね、昔お嬢さまに……あ、お嬢さま、あそこに人喰い雀蜂が! かなりの群れです。ここで叩いておかないと、一帯に被害が!」
「よーし、行くわよ! 火力全開で焼き尽くしてあげるわ!」
「お嬢さま、山火事だけは注意してくださいね」
「まかせなさい……と言いたいところだけれど、リーバイ、フォローよろしくね」
「承知いたしました」
そういうわけで、エマはリーバイと一緒に今日も楽しく冒険を続けている。
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