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第一章 半透明
人生で何度目かの結婚式のゲスト。
20代半ばを過ぎた辺りから年に1回以上は見るようになったこの光景。
何度も聞いたことがあるウェディングソングに耳にを傾けながら翔太はシャンパンを片手にウェディングドレスに身を包んだ憧れの人を見つめた。
今まで一緒に過ごしてきた時間のなかで1番綺麗に見える彼女は本当に幸せそうでこれで良かったんだ、と翔太は思う。
彼女に恋をしていたのはもう昔の話だし彼女と付き合っていた訳ではない。
それなのに心から祝福できないでいる自分がいた。
やがて、キャンドルサービス中の彼女が翔太の目の前に来る。
今までで1番綺麗な彼女は翔太を見つけるとニッコリ笑った。
「今日は忙しいのに来てくれてありがとう」
彼女の言葉に続いて彼女の旦那さんが隣で会釈をする。
隣に立っている彼は翔太がかつて彼女を好きだったことを知らないだろう。そして、今も変わらず彼女に憧れていることもきっと知らないだろう。
でも、世の中には知らない方が幸せなこともたくさんある。
だから、これでいいのだ。
気持ちは口にしない限り相手には伝わらない。
表情だって何でもないふりをしていればきっとバレない。
翔太はぎゅっと唇を噛み締めてウェディングドレスに身を包んだ彼女にお祝いの言葉を告げた。
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