最終章 この恋の終わりのその先に

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「俺、これでも本気で悩んでんだけど」 「そうなの?なんで?」 「前に姉ちゃんに少女漫画の選ばれない方って言われたから」  本当は彩未の言葉だけがそう思うようになった原因ではなかった。ここ数週間で起こった色んなことが重なった結果が今の悩みに繋がっている。でも、やっぱり好きな子の前で弱みを見せるようなことはしたくなくて翔太はそれ以上のことは言わなかった。  その“好きな子”の張本人である美鈴は翔太の気持ちはもう終わったものと思っているのか普通に友達に話すようなテンションで口を開いた。 「確かに翔太は選ばれない方っぽいね」 「なんでそう思うの?」 「お人好しだから」  美鈴のその言葉に翔太は小さな声で「そっか」とだけ返した。本当はお人好しなんかじゃない。自分が本気で行動しないからだ。  だが、努力をすればそれなりの結果が出る勉強と違って恋愛は努力だけでは変えられない部分がある。それに人の心は常に変化する。最初の頃は好き好きと言っていたカップルが結婚して冷めてしまうことなんて話は本当によく聞く話だ。それくらい恋愛の先の結婚というものは難しくて面倒なものに翔太には思えた。  独り身という言葉は少し寂しそうな気もするけど、その分お金と自由があるしきっとそんなに悪いものじゃない。そんな気がした。  そう思って水を口につけようとすると、今度は美鈴が「じゃあ」と口を開いた。 「逆に聞くけどさ」 「うん」 「私の魅力ってどこだと思う?」  そう聞いてくる彼女の表情はどこか真剣で翔太は少し驚いた。普通そういうのは男友達ではなくて彼氏に聞くもんじゃないのか、と内心思いながらも翔太は思っていたことを口にした。 「明るくて裏表がないから誰とでも仲良くなれて行動力がある。彼氏もそう言ってなかった?」  嫌味も込めてそう問いかけると、美鈴は首を左右に振った。 「そういう甘い雰囲気にならないもん」 「やっぱり冷めてるね。本当ならラブラブな時期のはずなのに」  そう言った後で「言いすぎた」と思ったけど、美鈴は表情ひとつ変えず小さく頷いた。 「私もそう思う。友達だった期間が長かったしさ」 「なるほどね」  そう返しながらも本当は素直になれないだけなんでしょ、と心の中で付け足す。好きな子だからなんとなく想像がついた。恋とは、そういうもんだ。  そんなことを思っていると、美鈴はバツが悪くなったのか「まぁ私の話はここまでにして」と勝手に話を完結させ水の入ったコップに手を伸ばした。 「翔太もはやく彼女作りなよ」 「なんで?」 「何でもだよ。私、翔太なら絶対良い人見つかると思うんだよね」  そう言ってニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべる美鈴を見ながら翔太は心の中でため息をついた。  自分は1人の時間も大切だから恋愛はしたいけど結婚をする気は1ミリもない。そんな考えを今の彼女に話す勇気はなくて翔太は適当に「頑張るよ」とだけ返した。
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