第二章 夢と現実

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「翔太、俺の話聞いてんの?」 「え?」  翔太がビールから顔をあげると、頬が赤く染まった朋也が不満そうな表情を浮かべていた。  翔太は昔から色々考え出すと黙り込んでしまうことは昔からよくがあったけど、そう言う時間は数秒や数分だ。それは朋也模試っているはずなのに怒っていると言うことは、いつもより長い時間黙り込んでいたのだろう。 「ごめん、考え事してたわ」 「いや、別に良いけどさ」  朋也は本当に気にしてなさそうな様子でそう言ってビールを一口飲んだ。 「来年になったら今よりもっと女として見れなくなりそー」 「2人目いつだっけ?」  翔太が聞き返すと、彼は指で2をつくった。 「そっか。楽しみだな」 「まぁ子供は可愛いからな」  そう言って焼き鳥に手を伸ばすと、朋也は「もちろん真菜のことも好きだぜ」と翔太にもう一度渡さない宣言をしてきた。どうやら翔太が軽い気持ちで口にした冗談を本気にしているらしい。 「別に誰もとらねーって。俺、一応好きな子いるし」 「そうだっけ?」 「忘れたのかよ」  翔太が苦笑すると、朋也は思い出したように「あぁ」と呟いた。 「お前の病院の受付の子だっけ?元バイト仲間の…」  しっかり覚えてんじゃん。翔太は心の中でそう言って自分も焼き鳥に手を伸ばした。  翔太達の飲んでる席の隣の席では、自分より5歳くらい若いスーツを着た男性グループが結婚報告をして周りに冷やかされているのが見えた。きっと、あの席で祝われている彼も数年後には今の朋也みたいに奥さんが女に見えないとか言ってるんだろうなと思うと何とも言えない気持ちになった。  翔太が緩くなったビールを口につけようとすると、朋也が口を開いた。 「で、彼女は?」 「婚約した」 「え、おめでと!」  大袈裟に拍手をする朋也に翔太は「違うって」と口を挟んだ。いくら長年の親友とはいえ、ちょっと言葉が足りなかったようだ。 「俺が婚約したんじゃなくて彼女がだよ」 「ってことは、お前彼氏持ちの女が好きなの?もうすぐ人妻になる女が?」  翔太はこくりと頷いた。
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