変わらない毎日

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夜になり、ゆうちゃんが帰ってきた。 「ただいまー!」 「おかえり。」 「パパー!おかえりー!」 洸太がゆうちゃんに抱きついた。 「今日午前中、急に雨降ったよね。」 ゆうちゃんが言った。 「そうなの。私、買い物中だったからびしょ濡れになっちゃって。帰ってきたら洗濯物も濡れててガッカリ。」 「夕方からって言ってたのにな。大変だったね。」 ゆうちゃんが抱っこした洸太を降ろしながら言ってくれた。 「でも濡れて帰ろうとしてたら山部くんに会って家まで車で送ってもらえたの。」 「……へぇー。山部、なんで外にいたんだろ。」 「なんか園長先生に用を頼まれたって言ってたよ。」 「あ。花乃、今朝白い服着てなかった?」 珍しく目敏いゆうちゃん。いつも私の服のことなんて何も言わないのに。 「…うん。」 「それでびしょ濡れって下着とか透けてたんじゃない?」 少し怒ったような表情になったゆうちゃん。今日に限ってすごい洞察力。その通りですとは言いづらかった。 「大丈夫だったと思うよ。それにもしそうだったとしても、山部くんは気づかなかったよ。」 「何言ってんだよ。男ってそういうのは一番最初に気づくんだよ!」 言ってからハッとしたゆうちゃんはさっきより語気を弱めて呟いた。 「花乃のそういう不用心なとこ、心配だよ。」 「ごめん…。」 でも私のこと、心配してくれるのは嬉しかった。 相手は山部くんなのに、ゆうちゃんがそんな風に反応するとは思わなかった。 その日の夜。 雨に濡れて洗い直した洗濯物は寝室の隣の空き部屋に部屋干しして、扇風機をあてて置いた。 将来は子供部屋にするつもりの部屋で今は何もないけど、こんな時、洗濯物を干して置けるので便利だった。 洸太を寝かしつけてから、そっと布団を抜け出して確認すると、洗濯物はもう乾いていた。 家事を翌日に持ち越すのが嫌で、そのままその場で洗濯物を畳んでいると後ろからゆうちゃんに抱きしめられた。 完全にひとりだと思っていたから驚いて変な声が出てしまった。 「ごめん。驚かせた?」 ゆうちゃんが耳元で囁いた。 そうしてそのまま首筋にキスするゆうちゃんの手は私の胸を、生地の薄いパジャマの上からゆっくりと撫でた。 ブラジャーをつけていないから刺激が肌に簡単に伝わって、硬くなったところをゆうちゃんの指が行ったり来たりする。 「ゆう…ちゃん、ソファーへ行こ?」 私の提案に返事をしないままゆうちゃんは私にキスをした。 「花乃…。好きだよ。」 唇が離れて目が合うとそう言ったゆうちゃんは、その場に私を倒した。 ゆうちゃんは私を抱きながら何度も好きだよと言った。 確認するみたいに。 自分に言い聞かせるみたいに。 私の肩に顔を伏せたまま。 ゆうちゃんそれなら、 私を見て。 私を好きなら顔を上げて、あなたに抱かれてる私を見てよ。
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