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今、私の前に立っているのは誰?
ゆうちゃんが赤の他人のように見えた。
「今日、幼稚園で他の役員の人に聞かれたの。ご主人は佐伯マナちゃんのママと知り合いなの?って。皐月が浜に2人でいたって。ーーあの残業って言ってた夜でしょ?」
ゆうちゃんは何も言わない。
「何か言ってよ。私は幼稚園で他の人もいる前でそんなこと訊かれて惨めな思いをしてきたのに…ゆうちゃんは…黙ったままなの?」
そこまで言うと堪えていた涙がぼろぼろと溢れた。
「花乃…ごめん!本当にごめん!でもあれから会ってないし、これからも会わないから!」
ゆうちゃんの言葉は私の気持ちと何も噛み合っていない。
「会うか会わないかじゃないの!そんなのもうどうだっていいの…」
その先は呼吸が乱れて言えなくなった。
一度呼吸を整えてから言った。
「ゆうちゃん、もう私のこと好きじゃないでしょ。」
ゆうちゃんは昔から兎に角一途な人。
それは私が一番知ってることだった。
もうゆうちゃんに愛されていないんだと思うことが何より辛かった。
視線を逸らされるたび、「もう愛せない」と言われているようで悲しかった。
2人が会っていた事実はそれらが私の思い過ごしではないと認めざるを得ない。
すると、泣きそうな顔のゆうちゃんが、絞り出すように言った。
「好きだよ…花乃のこと。ずっと、今だって…。」
なんでゆうちゃんが苦しそうな顔をするのかわからなかった。
大好きだった人と再会して2人で会っていたゆうちゃんが何でそんな顔するのかと腹が立った。
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