過去の人

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決意を新たにした私が目にしたもの。 それは綾ちゃん本人だった。 病院の会計のところで座っていた。 こんな偶然あるんだと思った。 綾ちゃんは相変わらず綺麗だった。だからすぐに目がいった。 次、綾ちゃんに会ったら絶対に正気ではいられないと思ってた。それなのに、いざ綾ちゃんの顔を見た時、怒りよりも懐かしいと感じた。それだけ私があの頃、彼女を見ていたということだと思った。 「佐伯綾ちゃんだよね?」 近づいて声をかけた。私が綾ちゃんに声をかけるのは初めてだった。 顔を上げた綾ちゃんは私を見ると不思議そうな顔をした。私のことは覚えていないみたい。でも何か察したような表情になった。 「あなたは?」 「私は、前田花乃子です。優太の妻です。」
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