皐月が浜

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帰りの電車で会ったのはその日が初めてだった。 駅で電車に乗り込むと綾が既に座席に座っていた。 …前の駅から乗ってた? 夕方の帰宅ラッシュ時で地方の電車とはいえ流石に混んでいて綾の隣も空いてなかった。 オレはとりあえず綾の前に立った。 「この時間に会うの初めてだね?」 声をかけると綾が顔を上げた。 「優太…。」 綾にしては珍しくぼんやりした反応だった。 どうしたんだろう。 気になった。 電車は街から離れていき駅を通過する度に乗客が減った。やっと綾の隣が空いてすかさず座った。 「座れて良かったね。」 綾に言われて 「あー!疲れた!」 オレは思わずため息をついた。他の席ならすぐに座れたけど綾の隣が空くのを待っていたらかなり長い時間立つことになっていた。 「もう若くないもんね!」 綾がにやっと笑って言った。 「ほんと!高校生に戻りたいわっ!」 言ってから、それが他の意味も含んでしまって変な感じになるなと思った。 お互い無言になる。 この日の綾はやっぱり口数が少なくて静かだった。
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