皐月が浜

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「じゃあ、抱いてよ。」 花乃が言った。 「私を好きなら抱いてよ。いつかゆうちゃん誘われたいって言ってたよね。なら私からいくらでも誘ってあげるから今すぐここで抱いてよ!」 オレを責める慟哭に、 花乃の心を失った絶望に、 我を失った。 花乃にこんなことを言わせてしまう状況に耐えられなかった。 自分の罪を無視して、どうしてわかってくれないんだと幼稚な怒りをぶつけた。 気づけば花乃が足元でうずくまって泣いていた。 そのまま家を飛び出した。 車に乗り込んでもしばらく動けなかった。 花乃を押さえつけた手が震えてる。 オレ、花乃に何した? 花乃の悲鳴みたいな泣き声が耳について離れない。 オレが守らなきゃいけない相手を オレ自身が怖がらせて傷つけた。 花乃を傷つけてしまった。
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