前田花乃子

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大学で会えば話す仲だった。 プライベートでも、山部くんもいたけどご飯に行ったりドライブに行ったり。 でも私は前田くんの全てを知っていたわけじゃない。 それでも彼のことをずっと想っていた。 前田くん以外に好きな人が現れなかった。 他の人を好きになろうと思えなかった。 そのくらいに前田くんは私の心の真ん中にいた。 前田くんは、大学に入って4年になるまでに8人は彼女ができた。 でも私の知らないところで付き合っていた人もいたのかも知れない。 みんなどこか綾ちゃんに似ていた。 あまり似ていないように見えても声がそっくりだったり、陸上部だったり何かしら“綾ちゃんぽさ”を見つけることができた。 そしていつも3ヶ月くらいで別れていた。 私は虚しく思っていた。 彼女ができると「またか」と思うようになった。 どうせ続かないよ。と。 でも綾ちゃん似の彼女達の、前田くんを彼氏にしたと勝ち誇った顔を見るのは嫌だった。 前田くんが彼女と寄り添っていたり、手を繋いでいたりするのは見たくなかった。 だから一生懸命見ないようにした。 それなのにどうしても、目で追って視界に入れてしまって一人で凹んでいた。 前田くんには、綾ちゃんを想い続けて欲しかった。 綾ちゃんを想って誰とも結ばれなければいいのにと。
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