妻の決心

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妻の決心

side優太 「え…?」 自分が言われたことの意味がわからなかった。 「綾ちゃんにはゆうちゃんが必要なの。」 「花乃…。綾のことは…。」 思わず下を向いてしまった。うまく説明できそうにない。下手すればまた花乃を傷つけてしまう。 でも花乃がオレの手を大丈夫と言うように握ってくれた。オレは言葉を選びながら言った。 「綾には、幸せになって欲しいと思ってる。大切に思ってるから。都合よく聞こえるかもしれないけど、それが本心なんだ。でも、それを叶えるのはオレじゃない。オレが一番幸せにしたいのは花乃だよ。花乃と子供たち。どんなに時間がかかってもそれを証明したいと思ってる。」 花乃の目は揺るがずオレを見据えている。 花乃は言った。 「ゆうちゃんがそう言ってくれて良かった。 正直に、綾ちゃんへの気持ちを私に話してくれて…。 嘘をつかれるよりも嬉しい。私たちのこともちゃんと大切に思ってくれて、嬉しい。 でも、だから後悔してほしくないの。」 オレの手を握る花乃の手に力が入った。 「綾ちゃん、もう死んじゃうんだよ。」 月明かりに照らされた綾の顔が目に浮かんだ。 言葉が出ない。
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