瞬きの時間

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瞬きの時間

side優太 ここ数日のことは、目まぐるしく変わり過ぎて 今まで自分がどれだけ平和に生きてきたか思い知らされた気がした。 最期の時に寄り添う。 花乃にそう言われても、綾がそれを望むとは限らない。 綾は今もオレに気持ちがあるのか? 皐月が浜へ行った日だってオレが一方的について行っただけ。 それに綾と会うということはやはり花乃を苦しめることのように思えた。 それでも花乃は言う。 「私は高校の頃ずっと二人を見ていたの。だから二人のことは、私にとっても特別なの。」 ーーーーーそれから オレの、他人には理解し難い生活が始まった。 朝、家を出て仕事へ行き、帰りに綾のところへ行く。 綾と時間を過ごして、花乃の待つ家へ帰る。休みの日も綾を訪ねた。 綾は残りの時間を病院ではなく家族と過ごすことを選んだ。 容態が変わったらすぐに入院することになるけどそれまではマナちゃんや母親のいる実家にいた。 花乃は綾のことを聞いてこないし、オレも綾のことを家では話さなかった。 洸太の時にひどかったつわりも今のところ軽く済んでいた。それでも体調は気遣っていた。 初めて綾を訪ねた時、綾はオレを見て驚いていた。 「花乃子さんってやっぱり変わってる。」 そう、ぽつりと言った。 オレが返事をしかねていると 「すごく優しい人ってこと…。」 目を潤ませ綾が言った。
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