瞬きの時間

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綾は痩せた。それでも、窓の外を見る横顔が綺麗で、思わず見惚れることがあった。 マナちゃんといる時は、本当に幸せそうな顔をしていた。オレの知らない、母親としての表情だった。 そういう時は二人を邪魔しないように、そっと離れた。 でもマナちゃんがその場にいないと、よく泣いていた。あの子を残していかなければならないことが辛いと言って泣いていた。 日に日に弱っていく綾は起きているのも辛そうで寝ていることが増えていった。 そういう時は綾の手を握った。 「優太の手…好きだったな。」 そう言った綾の声がとても弱々しいものになっていると気づいて切なかった。 ーーオレも綾の手、好きだったよ。 言いたいのに涙で喉が詰まって言えなかった。
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