前田花乃子

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それでも大学4年になると、前田くんから離れるということを意識し始めた。 次々と彼女を作る前田くんに悲観して、他に目を向けたくなった。 それに就職先は流石に同じというわけにはいかなかったから自分の行きたい企業を見つけて就活し、無事に内定をもらうことができた。 前田くんも難なく内定を取っていた。 大学を卒業すればもう前田くんに会うことはないだろうな。 ときどきクラス会で顔を合わせられるかも。 その時は一緒に行けなくても、少しは話しかけてくれるかな。 「岩瀬さん」と私を呼ぶ声が優しくて目が合うとニコッと笑ってくれた。 それに特別な想いがないことは知っていた。 でも同級生として前田くんの記憶のどこかに残れるなら幸せじゃない。なんて思い始めていた。 その頃は前田くんへの想いを一生懸命封印しようとしていた。 誘われた男の子と出かけてみて、好きになろうと頑張ったり、必死に前田くんに合わせていた通学のサイクル崩したり。 …結局、前田くんへの想いを消すことなんてできなかったけど。 そんな時、恒例となっていた高校時代のクラス会が開かれることになった。 毎回お盆や年末の帰省に合わせていたクラス会、来るメンバーは大体決まっていた。 私は大学1年のバーベキュー以来毎回、前田くん、山部くん達と一緒に行っていた。 彼女ではないけれどその日だけは前田くんの何かになれた気がした。 秋川さんはすっかり前田くんへの想いを吹っ切れたようだった。 でも私に冷たかったのは、私が生意気にも前田くんたちと一緒にいたからだと思う。
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