瞬きの時間

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それから何日もしないうちに綾は容態が急変して病院へ運ばれた。 オレが病院へ駆けつけたときにはもう意識がなかった。 病室で泣きながら寄り添うマナちゃんとお母さんを見て、ここからは家族だけの時間だと思い、黙ってその場を離れた。 一人になっても身の置き場のない思いで、目的もなく車を走らせた。 そうしてふと思い立って、実家近くの駅前の公園へ向かった。 うちに来た綾をいつも見送っていた場所だった。 綾との思い出があり過ぎてずっと避けてきた場所だった。 久しぶりのその公園は昔と何も変わっていなかった。 しばらく一人で佇んでいると電話があった。 それは綾のお母さんからで、綾が息を引き取ったと知らされた。 「最後に綾と過ごしてくれて、ありがとうございました。」 娘を亡くして一番辛いはずなのにそう言ってくれた。
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