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この頃になるとみんなお酒も飲めるようになって、クラス会も居酒屋での飲み会になっていた。
年末ということもあって店内は混んでいた。
飲み会が始まると席はバラバラと入れ替わり、前田くんはいつの間にか違う席で女子グループに囲まれていた。
これも見慣れたもので特に気にしなかった。
高校時代から人に囲まれている前田くんを見てきたから。
飲み会も時間が経てばグダグダになり、いつの間にか帰っている人、男女で消えていく人、酔いつぶれる人、ひたすら介抱する人と様々。
山部くんはお酒が飲めないので毎回車で、前田くんと、タケくんと一緒に私も乗せてもらっていた。そして帰りも必ず送ってくれるから私たちは頼りにしていた。
山部くんは話しやすくて、何でも笑い話に変えてくれるからよく笑わせられた。誰に対しても同じ態度で堂々としているとこ、密かに尊敬していた。
よく気が回るからいつもみんなのお世話係になっていた。
この時もやっぱりお世話係だった山部くん。
「お前マジふざけんな!ほら水!」
キレてるようで優しい山部くんに笑ってしまった。
山部くんは笑っている私に気づいて
「ちょっとー!岩瀬さん、笑ってないでコイツ起こすの手伝ってよー」
酔い潰れて寝てしまっていたタケくんを指差して言った。
タケくんは山部くんに揺すられても全く起きなかった。なのにしばらくして急に起きたかと思うと
「オレ!行くわ!後悔は…もうしたくないっ!」
完全に目が据わっているタケくんはそのまま千鳥足で秋川さんのところへ向かった。
異様な雰囲気に注目が集まり、会場は静かになった。
「沙耶ーー!やっぱ好きだー!」
秋川さんの前で大声で叫んだタケくんはそのまま倒れて寝てしまった。それを見て爆笑が起こる。
「ちょっと、そういうのマジ無理…!」
秋川さんは冷たい目でタケくんを見下ろしていた。
「タケくんって秋川さんが好きだったんだ。」
少し驚いて声に出ていた。
「バカだろ?高校の時からなんだよ。しかも一回フラれてるのに。」
山部くんが苦笑しながら言った。
「高校の時から…。ずっと?」
教室では山部くん達とふざけている印象しかないタケくんが一途に片思いしていたなんて。
「そ!ほんと、バカだよな。女はみーんな、優太が好きなのにさー。」
そう言って立ち上がった山部くんはタケくんの介抱へ向かった。
「おらー!タケっ!起きろ!!帰るぞ!」
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