前田優太

1/23
前へ
/153ページ
次へ

前田優太

side優太 中学に入学した頃から急に背が伸びた。 すると人とよく目が合うようになった。 背が伸びてそう感じるのかと思ったけど、視線を逸らされる事が多くて、何か顔についてるのかなとか、変なこと言ったかなと思っていた。 中1の夏、2年の先輩に告白されて付き合った。かわいい人だったから友達からはめちゃくちゃ羨ましがられた。 付き合ったって言っても夜電話がかかってきたり、夏祭りに2人で行ったりしただけ。 夏が終わると 「他に好きな人ができたから。」 ってあっさり別れを告げられた。 よく訳のわからないまま、勝手にやってきて去られた感じ。 でも会えば緊張したりしたのにな。 友達から「お前はイケメンだからいーよな!」と言われるし、女子から告白されることが何度かあって自分は“見た目が人よりいい”らしいと自覚した。 でもオレはオレのまま。 友達と遊ぶのが好きで、家に帰ればしょうもないことで母さんに怒られて、周りの奴らと何も変わらない。 それなのに彼女欲しーとかみんなが言ってる時に、お前はいつでも作れるだろと言われて蚊帳の外にされた。 「顔のいいやつは得だよなー」 そう言われても損しか思い浮かばない。 隣の中学の会ったこともない女子と付き合っていることになっていたり、告白を断わると調子乗ってると言われた。 断るのも結構削られのに。 好きになってくれたのに応えられなくて申し訳ないと思うし、オレのせいで傷つかないで欲しい。 泣かれるのもキツいし、後からよそよそしくされるのも困る。 でもそれをわかってくれる人は周りにいなかった。 そんなこと言えば嫌味なヤツと言われただろうな。 自分の見た目がもてはやされるたびに無駄にイライラしていた。 今にして思えば、同じことをしてもオレだけ怒られなかったり、ラーメン屋のおばちゃんがこっそりおまけしてくれたり得もあったかもしれない。 でも当時の自分は「イケメンだね」とか「カッコいい」と言われること苦手だった。 褒められてるんだろうけどなんて答えればいいんだよと思いながら「ははは」と無意味に笑うしかなかった。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

263人が本棚に入れています
本棚に追加