前田優太

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綾に会ったのは高1、9月の体育祭だった。 オレと綾はクラスが違ったけど2人ともクラス代表の運営委員になっていた。 係の待機時間、次の種目のため、ロープの数を確認したりストップウォッチを揃えたりしていた。 テントの下で座ったままの綾がオレに声をかけてきた。 「前田クーン!それもう確認してあるよー」 「……うん。」 わかってるけど念の為もう一度確認してるんだけど。 手伝う気もなさそうだし放っておいた。 「前田くんって下の名前なに?」 綾が唐突に聞いてきた。 なんでそんなこと聞かれるんだろうと顔を上げて答えた。 「優太…。」 「ゆーたっ!」 急に名前呼び捨て。ドキッとした。 したら呼び捨てにした当の本人の顔が真っ赤になってた。 「あれ?なんか照れるな」 なんて言いながら横を向いて前髪をむやみに直していた。 なんだよそれ。思わず笑ってしまった。 でもそれから優太と呼ばれるようになり、こっちも綾と呼ぶようになった。 綾はいつもオレの近くに来た。 女子同士で固まってチラチラこっち見て話すようなことはしなかった。 廊下の向こうから駆けてきたかと思ったらオレの髪をぐちゃぐちゃにしてそのまま逃げてったり、急に後ろから現れて脇をくすぐってきたり。 何をするか、何を考えてるかわからなくて綾が近くにいると身構えた。 オレのリアクションを見て笑う顔が可愛かった。 部活中に見かけた真剣な表情が大人っぽくてハッとした。 綾のことが気になっていた。
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