前田優太

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そのままホテルに入った。 綾とはあんなに躊躇っていたのに…。 そうして終わってしまえばこんなものかという感じだった。 もし綾としてもこんなふうに思ったのだろうか。 裸のまま寝ている彼女の寝顔を見ながら思った。 綾のことは抱きしめるだけでドキドキして苦しかった。 キスしたらそのまま押し倒したくなって、その衝動を必死で抑えた。 それはオレが高校生のガキだったからなのか。 もし彼女が、綾だったら…。 この寝顔が 裸で寝ているのが 綾だったら。 そう考えただけで、はっきりと昂ぶっている自分に気づいて愕然とした。 綾を未だ忘れずにいる自分に嫌気がした。 その気持ちを誤魔化したくて、忘れたくて、眠っていた彼女にキスをして起こすともう一度抱いた。 でももう無理だった。 何度会っても、何度抱いても、彼女を綾と比べていた。 この仕草、綾と似てるな。 綾ならこんなことは言わないな。 といろんなことを比べてしまう。 繋いだ手の感覚がこの手じゃないと言っていた。 綾の手の感触を探していた。 もう無理だった。 このまま付き合っていることが申し訳なくなって別れた。 自分から別れたのはこの時の彼女だけだ。
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