前田優太

16/23
前へ
/153ページ
次へ
穏やかで、控えめで、大人っぽくて、でも笑った顔は幼くて、笑い声が鈴の音みたいに心地よかった。 岩瀬さんには誰のものにもなってほしくなかった。 ずっとオレを見ていてくれる安心感。 綾とは真逆だった。 嵐みたいな綾。 ーー堪らなく好きだった。でもいつも何を考えてるかわからなかった。 綾は自由で、進みたい方へ進んでいってしまう。それに必死でついていったつもりだったのに。 オレの心を散々掻き乱して去ってしまった。 初めて自分に自信がなくなった。 大好きだった彼女が他の男を選んで。 他の子に好きだと言われて付き合ってみても、肌を重ねても虚しいだけだった。 結局好きになれなかった。 でも、岩瀬さんはオレを見てくれていた。想い続けてくれた。 大学一年の時、初めてのクラス会の前に、迷ってた岩瀬さんを誘ったら、嬉しそうに行くと答えてくれた。 「山部のため」なんて心で言い訳しながら、岩瀬さんに近くにいて欲しかったんだ。 いつも山部のためと言い訳して、他のやつに取られないか、心配してた。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

263人が本棚に入れています
本棚に追加