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店内に戻ると、もう店員達が散らかったテーブルを片付け始めていた。
そんな中、岩瀬さんは1人、グラスを両手で持って飲んでいた。
「ゆーーたぁ!二次会カラオケだってー!いこーよぉ!」
誰かわからない女子達を無視して岩瀬さんのところへ向かった。
横に座っても、ぼーっとしていてオレに気づかない岩瀬さん。
相当酔ってるのか?
何度か声をかけるとようやく気がついてこっちを見た。
酔ってる顔がいつもより艶っぽかった。
「岩瀬さん、山部がタケを送るから一緒に送るって言ってるけど、岩瀬さんはどうする?」
岩瀬さんはなぜか答えるのを躊躇った。
そうして言った。
「……どうしたら、前田くんの彼女になれるの?」
オレが答える間もなく彼女は続けた。
「ずっと前田くんのことが好きなの…。
私も…。私だって、前田くんの特別な人になりたいっ!」
いつもはオレと目が合うと逸らすのに、じっとこっちを見て、目からは次々と涙が溢れて…。
初めて彼女が思いを口にしてくれた。
嬉しくて、その場で抱きしめたくなった。
その気持ちを抑えて、彼女の涙を拭った。
柔らかな頬の感触が指から伝わって、もっと触れたい気持ちが込み上げた。
誰のものにもならないで。
山部も、何度か会ったっていう同じ学部のヤツも放っておけばいいよ。
オレだけを見て。
オレのものになって……。
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