前田優太

21/23
前へ
/153ページ
次へ
2人で歩き出しても行き先なんて決めてなかった。 ただ、やっと掴んだ手を離したくなかった。 ちゃんと好きだと思える人が現れたら、今度こそオレがどれだけ想っているのか伝えようと決めていた。 伝えなきゃ、相手に寂しい想いをさせるかもしれない。 伝えなきゃ相手を不安にさせるかもしれない。 心が離れてからじゃ伝えられない。 「岩瀬さんは、ずっと特別だったよ。」 ずっと近くにいてくれて、オレを想い続けてくれた。 柔らかい笑顔にいつも癒された。付き合ってたわけでもないのに特別だと感じていた。 「特別で大切だから触れられなかった。一生懸命気づかないフリして…。」 オレはオレ自身にすら素直になれず、いっぱい言い訳して、遠回りしたけど… オレを見上げる潤んだ瞳 冬の外気に赤くなった頬 無防備な唇 全てが愛しくて、気づけばキスしてた。 抱きしめると暖かくて、互いのコート越しでもわかる火照りはアルコールのせいだけじゃなかった。 やばい。 どうしよう。 好き過ぎる。 堰を切って溢れ出した気持ちに戸惑った。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

263人が本棚に入れています
本棚に追加