前田優太

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このまま、このまま… いろんな考えが過る。 そして少し冷静になる。 「酔った勢い」みたいな感じでは嫌だな。 大切にしたい。 もちろんこれまで付き合った子達のことだって精一杯大事に向き合ってきたけど。 やっぱり違う。 真っ直ぐ過ぎる想いを受け止めると決めたから、それ相応に応えなきゃならない気がした。 お互い酔ってるこの状況でホテルとかは違うよな。 本音を言えばこのまま、今すぐ、その肌に触れたい。 自分の物だと印をつけたい。 けれど…。 冷えた髪にキスをして気持ちを切り替え、彼女を離すと言った。 「コーヒーでも飲もうか。」 彼女の手を再び握ると歩き出した。 確かこの先に遅い時間もやってるカフェがあった筈だ。 ただその手前にホテルもあるけど今は違うから。 安心してよ、岩瀬さん。 そんな決意も込めて握る手に力が入る。 ホテルの前を通り過ぎた時、握った手に引っ張られた。 彼女が立ち止まっていた。 「このまま、コーヒーを飲んで帰ったらそれで終わってしまいそう。夢みたいに、この時間…無かったことになっちゃいそう。私、今夜これ以上を望んだら欲張りかな。」 「ーーそんなわけ…。」 そんなわけない。 オレはやっと手に入れた関係を今夜限りで手放す気なんてない。 それに、今すぐにでもと求めてるのはオレも同じ。 ただ、このまま関係を持ったらこれまでの彼女達との付き合いと同じにならないか不安だった。 好きだと言われて、オレも好きだと思って付き合い始めてもそのうち、会って食事してやるだけの関係になって、虚しくなって、相手に振られて ああ、またかって…。 あの感覚はもう味わいたくない。 でもそんなことをーー終わり方をもう考えるほうがおかしいよな。 岩瀬さんの真っ直ぐな視線に気付かされた。 こんな時、女の子の方が肝が据わってるというか、はっきりしてるというか…。 男のオレの方が躊躇するなんて。 「いいの?」なんてもう聞かなかった。 彼女の手を引いてホテルへと入った。
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