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幼稚園に着くと何人かの役員は来ていて、もう準備を始めていた。
「前田さん、おはようございます!」
元気に声をかけてくれたのはひろき先生だった。
明るくて運動神経抜群のひろき先生は子供達に一番人気の先生だ。
洸太も大好きな先生なんだけど、担任になったことはなくて、5歳児クラスになったときも、ひろき先生のクラスじゃなくてガッカリしていた。
爽やかを絵に描いたようなひろき先生はママ達にも人気があった。
そして…
ひろき先生の名前は
「山部浩樹」
ひろき先生は、私とゆうちゃんの同級生の山部くんなのだ。
私達が大学に通っていた時、山部くんは専門学校に通って幼稚園教諭の資格を取得し、幼稚園の先生になっていた。
大学生だった頃は3人で会ったりもしていたのに、私とゆうちゃんが付き合うようになって疎遠になってしまった。
ゆうちゃんと山部くんは本当に仲が良かったけど、お互いに忙しいからか彼らも2人で遊ばなくなっていた。
だから山部くんがこの幼稚園にいることは知らなかったので、入園式で再会したときには本当に驚いた。
当日、入園児名簿の保護者欄を見て先に知っていたみたいで山部くんから声をかけてくれた。
「前田さーん!」
呼ばれて振り向いた私達は、昔と変わらない人懐こい笑顔を見つけて目を丸くした。
「山部…っ。オマエなにしてんの?」
驚いたゆうちゃんに、山部くんはすまして答えた。
「失礼な保護者だな。ひろき先生って呼んでもらえます?」
そしてニカっと笑った。
「山部くん、先生なんだ!」
懐かしい顔に、はじめての幼稚園イベントに緊張していた私達は和んだ。
山部くんは私の脚に絡みついている洸太を見つけると
「わっ!優太にそっくりだなー!」
と驚いてから少し意地悪な顔をして小さい声で
「残念なとこまで似てないといいけど…。」
と言った。
「失礼な先生だな。クレーム出すぞ!」
と、ゆうちゃんが言うと
「え?もうモンペなの?」
と山部くんが言い返して2人笑い合っていた。
昔のように仲のいい2人を見て私も嬉しくなった。
ぐずっていた洸太も、山部くんが上手にあやしてくれてすっかり機嫌を取り戻し無事、入園式を終えることができた。
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