夕涼み会

5/8
前へ
/153ページ
次へ
夕涼み会は、午後5時から8時にかけて開かれた。 園児はみんな、浴衣や甚平を着ていて女の子はかなり気合の入った格好をしていた。 浴衣と言っても古風なタイプからヒラヒラしてドレスみたいなのを着ている子まで様々…。 ーー女の子もいいな。 と2人目への気持ちが募った。 先生達も浴衣を着ている。 若い先生たちはいつもよりはしゃいでいて可愛かった。 山部くんも夕涼み会が始まると甚平姿になっていて、園児達のお世話はもちろん、太鼓を叩いたり、裏方の作業をしたりとても忙しそうだった。 午前中のこと…とても聞ける感じではないな。 洸太には紺の生地に風鈴の柄の甚平を着せた。 毎日通っている幼稚園だけど、いつもとは違う時間帯で、先生達も違う格好。 しかも大好きなパパも一緒で洸太は大はしゃぎ。 ゆうちゃんも一緒だと、他のママ達の視線をチラチラと感じる。 これはいつものこと。 ゆうちゃんは背が高いからただでさえ目立つのに、小さい顔にはっきりとした顔立ち。パパになってもかっこいいから…。 「おーい!花乃子ちゃーん!」大きな声で呼ばれた。琴子さんを人混みの中からやっと見つけて駆け寄った。 こちらを見て会釈してくれたのは、優しそうな琴子さんの旦那さん。その横に、旦那さんにそっくりなお兄ちゃん、洸太と同い年の葵くん。葵くんは茶色の地のチェック柄の甚平を着ていた。 さすが琴子さん、オシャレなの選んでるなー。 琴子さんは、役員運営の夜店で買ったかき氷を片手に、もう片方の腕に焼きそばの入ったビニール袋を提げていた。 「琴子さん、もう買ったんだね!」 「そーよ!早くしないと毎年並ぶからさー。 あ、こうちゃんと、こうちゃんパパ!こんばんはー!」 「こんばんは。いつも妻と息子がお世話になってます。」 洸太に手を引っ張られてようやく私に追いついたゆうちゃんが琴子さんに挨拶した。 そしてパパ同士、会釈して世間話をし始めた。 すると、にっこり笑って琴子さんが私に耳打ちした。 「ご主人、相変わらずすんごいイケメンね!」 私もつられてゆうちゃんを見る。 ゆうちゃんはそんな私達を見て、ハテナを浮かべたまま微笑んでいた。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

263人が本棚に入れています
本棚に追加