夕涼み会

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「花乃子ちゃん、あと30分したら夜店係の交代だから、先にこうちゃんとお店周ってきたら?」 「うん、そうする!また後でね。」 琴子さんと別れて歩き出すと、ゆうちゃんが言った。 「琴子さんっていつも明るいよね。」 「うん!それにいろいろと助けてくれるしホント一緒にいると心強いの。」 「花乃、いいママ友に出会えて良かったね。」 ゆうちゃんは自分のことみたいに嬉しそうに言った。 「ママー!僕ヨーヨーやりたーい!あとラムネほしい!」 「うん、順番に周ろうね。」 洸太にそう答えて、ヨーヨーのお店を探すため顔を上げて周りを見渡した。 今日は幼稚園の園庭に、3学年、6クラスの子供とその親がいるからすごく混雑していた。 ヨーヨーのお店は…確か午前中の準備で見た時、鉄棒の前にあったよな…。 鉄棒の方を見ると人混みの向こうに確かに『ヨーヨーやさん』と書かれた手作りの看板を見つけた。 あ……。 ヨーヨー屋さんの前の沢山の人の中に、すらっと背が高くて綺麗な人がいた。ピンクの浴衣の女の子の手を引いて歩いている。 ノースリーブの白いロングワンピースを着ていて、肩まで伸びた茶色がかった髪がサラサラと揺れていた。 久しぶりに、綾ちゃんに似た人を見た。 綾ちゃんはゆうちゃんの高校時代の彼女。 綾ちゃんと別れてからも、ゆうちゃんが綾ちゃんと似た人とばかり付き合ったり、綾ちゃんっぽい人を見かけると目で追っていたのを私は知っている。 だから私も自然と綾ちゃんみたいな人を見ると反応してしまう。 最近はあまり意識していなかったんだけど。 すぐにゆうちゃんを見た。 ゆうちゃんはしゃがんで洸太の相手をしていた。 洸太がムキになって繰り出すパンチを掌で受け止めて笑っている。 綾ちゃん似の女性には気づいていなかった。 もうすっかりパパになっているゆうちゃん。 私、気にしすぎかな…。 再び顔を上げてその人の方を見たけど、もう人混みの中に消えて居なかった。 その後、ヨーヨー釣りをして、ラムネを買って、焼きそばを買ったらちょうど係の交代の時間になって琴子さんが呼びに来た。 「花乃子ちゃん!行こ。前半の係の人に怒られちゃうよ!」 「今行く!ゆうちゃん、洸太のことお願いね。こうちゃんもパパとお利口にしていてね。」 長椅子に腰掛けてラムネを飲んでいた2人は『はーい』と同じタイミングで返事をした。 どこまでもそっくりな2人に笑って手を振って、琴子さんと持ち場へと急いだ。
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