夕涼み会

8/8
前へ
/153ページ
次へ
私の不安を他所に、お菓子釣りコーナーは急に混雑し始めた。 次々と子供が来てお菓子はどんどんなくなった。 考える暇もないほど忙しく、お菓子を外して、渡して、外して、渡して…。 「あ、ママだー!」 聞き慣れた子供の声に我に返ると洸太とゆうちゃんが立っていた。 ゆうちゃん…。 もう、綾ちゃんに会った? 綾ちゃんを見つけた? 思わずゆうちゃんを見つめてしまった。 「花乃…?」 ゆうちゃんは眉を上げて不思議そうに私を見ていた。 「こうちゃん来たね!いらっしゃーい!特別に教えちゃうとこの紐がおすすめよ!」 琴子さんが一番大きなお菓子のついた紐をツンツンと指差して揺らした。 「せーの!」 洸太が力任せに紐を引っ張ると、お菓子の袋が勢いよく飛び上がった。大きい袋だけど中身はポテトチップスで軽いからだ。 「こらっ!洸太、強すぎだよっ!」 勝手に紐から外れて飛び出したお菓子をゆうちゃんが慌ててキャッチした。 その様子を見て洸太はケラケラ笑っている。 「こうちゃんパパナイス!」 琴子さんに褒められてゆうちゃんも笑った。 そんな場面でも、私は固まったままで反応できなかった。 頭の中を、体中を、不安が駆け巡っていた。 目眩までしてきた。 「花乃子ちゃん、なんだか調子悪いみたい。この後の片付けは、私から会長に言っておくから、帰って休ませてあげて。」 琴子さんがゆうちゃんにこそっと話していることにも全く気付かなかった。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

263人が本棚に入れています
本棚に追加