不安

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不安

「花乃、ここ数日夕涼み会の準備で毎日のように幼稚園へ行ってただろ?だから疲れが出たんだよ。」 ダイニングテーブルの椅子にぼんやり座っていると、ゆうちゃんが冷たい水をコップに注いで持ってきてくれた。 結局、夕涼み会は洸太のために最後の盆踊りまで居たけど、その後の片付けはしないまま帰らせてもらった。 あれから、綾ちゃんを見かけることはなかった。 家に帰ると本当に体調が悪かったようで、熱が出てしまっていた。 ゆうちゃんは帰ってきてからもいつも通りだった。 綾ちゃんには会わなかったのかな。 でも私に心配させまいとそう振る舞っているのかもしれない。 会わなくても、山部くんから聞いたかもしれない。 山部くんが今朝言いかけたのはきっと綾ちゃんのことだ。 山部くんはゆうちゃんと綾ちゃんが付き合っていた時一番近くにいた人だ。 あの女性が綾ちゃんだと気づかないわけない。 それにあの女の子は年長と言っていたから山部くんのクラスなんだと思った。 「山部、忙しそうだったなー。まったく話せなかった。」 ゆうちゃんは自分のグラスにも水を注ぎ、一気に飲み干した。 「…うん。山部くん、今年は主任先生も兼ねてるから大変なんだと思う。」 「そうなんだ、新卒で入ってからずっとだから、もうベテランなんだな。…あの山部が。」 ゆうちゃんが笑って言った。 ゆうちゃんと山部くんには会わなくなった今も、私にはわからない絆があるんだろうな。 それは綾ちゃんも同じ。 15年前の高校の教室で ゆうちゃんと、綾ちゃんと、山部くん達…。 キラキラして楽しそうだった。
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