再会

5/8
前へ
/153ページ
次へ
洸太に急かされて席についた。 洸太はオレの手からアイスを受け取ると早速食べ始めた。 よく見ると、綾は女の子を連れていて その子はピンクのワンピースを着て、ピンクのアイスを頬張っていた。 「あれ?マナちゃんだー!」 洸太がその子見つけて言った。 その口は既にアイスだらけになっていた。 綾が連れていたその女の子は、洸太に名前を呼ばれると驚いた顔をしてそのまま俯いて、何も言わずチミチミとアイスを食べ続けた。 「もー何恥ずかしがってるの。」 綾が笑って言った。 「あのね、マナちゃんは新しくさくら組になったんだよ。東京から来たんだよ。」 さっきから一言も喋れない俺とは対照的に、洸太はアイスを頬張りながら一生懸命、説明してくれた。 「そうなの!よく知ってるね。」 綾が洸太に言った。 「うん。ひろき先生が教えてくれた。仲良くしてあげてねって。マナちゃんもうみんなと仲良しだよね。」 “マナちゃん”はまた下を向いてモジモジしてから 「うん」と言った。 それから洸太は綾を見ると少し考えて言った。 「マナちゃんのママ?」 「そうだよ!マナちゃんのママ!よろしくね。」 綾が洸太に微笑んだ。 それを見て嬉しそうな洸太は今度はオレを指差して綾に説明し始めた。 「あのね、これがぼくのパパだよ。まえだゆうたっていう名前だよ!」 「そうなの。前田優太っていうのね。」 そう言って綾はこっちを見た。 オレはまだ固まったままだった。 「そう!だけどママはゆうちゃんっていうよ!」 「そうなんだ。ママとパパ仲良いね。」 綾は洸太に言った。 「きみは前田何くんなの?」 「ぼくは前田こうたくんだよ!」 洸太が胸を張って答えた。 自分で洸太くんって…。 綾が笑っていた。 一通り説明して満足気な洸太はこっちへ向き直りまたアイスを食べ始めた。 「わ!アイスこぼれてる!」 綾に言われてハッとした。 オレのアイスからさっきの店員が乗せてくれた新作フレーバーのアイスが落ちていた。 綾は自分のバックに手を入れるとポケットティッシュを取り出して、オレに差し出した。 「ありがとう…。」 ティッシュを受け取ろうとしてその手が目に入る。 当たり前だけど、綾の手だ。 指が細くて長い。 華奢なのに強引にオレを掴んでいた手。 あの日、離れてしまった手。 ティッシュを一枚もらうと、溢れたアイスを拭いた。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

263人が本棚に入れています
本棚に追加