予感

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予感

「ただいまー!」 玄関で声がした。 ゆうちゃんと洸太が帰ってきた。 熱が下がり、ゆうちゃんのお粥のおかげで元気も取り戻せた私は、リビングのソファーでくつろいでいたところだった。 ガシャガシャとビニール袋の揺れる音がする。 何か買ってきたのかな? 「ただいまー!」 そう言いながらゆうちゃんがリビングに入ってきた。 続いて洸太が駆けてくる。 「ママー!」 満面の笑みで飛び込んでくる洸太を抱きとめた。 「ママ!ママのアイス買ってきたよー。」 洸太の手にはアイス屋さんのビニール袋。 「ママが好きなみどりのやつだよ!」 「ありがとう、よく覚えてたね!」 前にショッピングモールでどうしても食べたくなって買い物の帰りに洸太と食べたことを思い出した。 ゆうちゃんはリビングとカウンターを挟んだキッチンで買ってきた物を袋から出していた。 私も手伝おうかとゆうちゃんのところへ行った。 「ゆうちゃん、お粥ありがとう。美味しかった。」 「よかったー!熱はどう?」 「もう下がったみたい。」 「そっか!でも今日は一日はゆっくりしてなよ。昼はうどんにしようかと思って買ってきたから。」 「ありがと。ちょうど食べたいと思ってたとこ!」 ここまで会話して違和感に気づく。 ゆうちゃんとまったく目が合わない。 ゆうちゃんはいそいそとペットボトルや玉子を冷蔵庫に入れている。 「ゆうちゃん。」 「んー?」 「それ洗剤だよ。」 「あ…。」 買ってきた食器用洗剤のボトルを冷蔵庫にしまおうとしていたゆうちゃんはやっとこっちを見た。 「ハハ…。ぼーっとしてた。」 そう言うと、そのボトルをシンクの下の棚に仕舞う。低い位置なので背の高いゆうちゃんは腰をかがめる格好になった。 するとズボンの後ろポケットから何かはみ出していた。 なんとなく、引き抜く。 ポケットティッシュだった。
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