佐伯綾

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ジャージの袖を縛って置いた。 教科書に落書きした。 そっと近づいて驚かせた。 色々やったイタズラ。 優太がびっくりしたり、戸惑ったりした後で、私を見て笑う。 その顔を見るのが好きだった。 とにかく優太の近くに居たかった。 あの穏やかな空気のそばに それなのにただ居るのはなぜか照れくさくていつもイタズラした。 その日も優太の手を何も言わずに掴んで油性ペンで落書きした。 優太はもう「はいはい。」って感じ。 優太に許してもらえる存在なのが嬉しかった。 大きな手。 本当は手を繋ぎたかった。 私の手を握って欲しかった。 でも照れくさくて言えないから落書き…。 我ながら捻くれている。 「綾ってほんと何考えてるかわかんないわ。」 確かに…。 こんな捻くれたことばかりしてたらわかんないよね。 顔を上げると大きくて優しい目。 好きだな…。 「優太のことが好きなだけだよ。」 「はっ?!」 あ、変な顔。目も口もぽっかり開いちゃってる。 今までで一番面白い反応かも。 でもなんか言ってよ。 恥ずかしくなって、また絵を描き始めた。 わー言っちゃったよ。 本当はバレンタインにチョコ渡して言うつもりだったのに 「すきです」って 手が震えそうなのを必死で抑えて描き終えて、すまして教室を出る。 だめ、まだ赤くなるな顔! 教室を出ると後ろからドッと山部達の騒ぐ声がした。
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