佐伯綾

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テスト前はいつも優太の部屋で一緒に勉強した。 優太の家に行くと、お母さんとおばあちゃんが迎えてくれた。 勉強する私達のところへおばあちゃんが大量のお菓子を持ってきてくれた。 優太そっくりの綺麗なお姉さんは、優太の小さい頃の話を内緒で教えてくれた。 夜になるとお父さんも帰ってきて、帰りがけ挨拶のためにリビングに寄るとみんな一緒にテレビを見ていていいなって思った。 うちとはまるで違う。 優太に心配かけたくないし、同情されるのも嫌で、家の事情は一切言ってなかった。 初めてのキスは優太の部屋だった。 優太と一緒に勉強している時に、何度か顔が近くなることがあってドキドキした。 キスしたかった。 優太も私とキスしたいって思ってくれてるのかな…。 その後も何度か顔が近づくことがあって、ある時長く目が合ってそのままキスをした。 唇を離すとお互い顔が赤くなった。 「ヤバいね」 「うん。」 照れくささと恥ずかしさで無言になってしまった。 顔の火照りが治らない中、おばあちゃんがおやつを持ってきてくれた。 赤くなった私達を見て 「あら、暖房消しなさいよ。」 と言った。 おばあちゃんが部屋から出ると、顔を見合わせて笑ってしまった。
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