見つめていたい

佐伯綾

優太と付き合って幸せだったけど、
家の中はますます荒れていた。

ママがパパのカードで買い物しまくり散財した。
パパにカードを止められて、生活に必要なお金まで払ってもらえなくなってしまった。

それなのにママは「絶対に別れてやらない。」
と言っていた。

それがママの最後の砦。
素直に「戻ってきて」が言えないママの最後の手段。

ママの実家に時々お金を借りに行ってることも知っていた。

それでも督促状が家に届くことがあった。

勉強は好きだったし陸上も続けたかったけど進学は無理だとわかった。

早く家を出たかった。

早く自立してママと離れたかった。

せっかく優太といるのにイライラしてしまって試すようなことを言った。

あんな温かな家庭で育ってる優太に私の気持ちがわかるはずないのに、当たり前のように「地元で進学」と言ってる優太を困らせたくなった。

「私、地元を離れると思う。」
と言ってみた。
「行くな」とか、「じゃあオレも東京へ行く」とかそんな言葉を期待してたのに

「オレは地元に残るけど、綾に会いに行くからね。」
優しく言われたら何も言えない。

少し前まで通訳になりたいとか、海外留学したいとか色々考えていたのにその進路が断たれてしまった。それなのにどんどん月日は流れた。

成績がいいのに勿体無いからと先生が色々な方法を探してくれた。

奨学金、教育ローン、学費免除の特待制度。

でもどれも少しずつ私の希望と合わなかったりズレがあったり。

ママから離れたいのに、優太の近くにいたくて、私の頭は混乱していた。