佐伯綾

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“成績がいいのに勿体無いよ。” “佐伯さんの成績なら色々選べるよ。” “親御さんに教育ローンとか、相談してみたら。” “特待でこの大学行けるよ。” 担任も進路指導の先生も大学へ行くのが当たり前みたいに言ってきた。 それじゃママから離れられない。 「無理に家を出ないで大学のうちは、親御さんの元から通えばいい」 勝手なこといわないでほしかった。 あと四年も耐えられない。 それにママはもうどこからもお金を借りられないし、奨学金を使って無理して行ったって そもそも本当に行きたい大学じゃない。 それなのに無理して行く意味が見出せない。 誰にも言えなかった。 優太にも、真依子にも みんな、私と違うから…。 「人生、後からどーにでもなるよ?」 はっとして相良さんの方を見ると、こっちを見て微笑んでた。 そんな表情もするんだ…。 大学に行かない選択肢。 それを探してみようと思った。 「あれ?でも相良さんは大学生なんですよね?」 急に思い出して訊いた。 相良さんはにっこり笑って首を傾げた。 「さぁー?」 何それ…。 でも気持ちはすごく楽になっていた。
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