佐伯綾

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高3の夏休み、真依子が彼氏とヤったと言って盛り上がってた。 「初めは痛かったけど、すげーいいよ!愛されてるって感じで!気持ちいいし!」 すごいざっくりした感想…。 でも、少し興味は湧いた。 優太はどうなんだろう。 ハグはする。キスも。 すごく優しく。 優太の呼吸が速くなって、もしかしたら興奮してるのかなって思うときもあった。 でも優太とはそういう関係にならなかった。 優太のことは相変わらず大好きだった。 山部達と一緒にいるのも楽しいし、その時間は進路とか家とか忘れていられる。 でも優太と私の間には大きな溝ができてる気がした。 家が荒れてて将来が定まらない私と 家庭に恵まれてる優太。 優太といることで、自分の不幸せな部分がより鮮明になるように感じた。 優太は付き合い始めた頃と変わらず優しかった。 でも私はその優しさにすら、イライラするようになっていた。 真依子が言うように、 してみたら愛されてるって思えるかな。 してみたら…何か変わるのかな。 その日…。 優太の部屋で勉強していた時…。 季節は秋になっていた。 どちらからともなくキスをした。 啄ばむような優太のキス。 その日はいつもより長い気がした。 このまましたいな。 優太に私の身体を求めて欲しかった。 「綾…。」 抱きしめられた。 ドキドキする。 優太の心臓もすごくドキドキしてた。 身体が熱くてもっともっと…。と、優太を求めていた。 先に進もうよ。そう思って 優太の首にそっとキスした。 「…っぁ!」 優太の声が小さく聞こえて、抱き合っていた身体を引き離された。 優太は顔を真っ赤にしてただ黙っていた。 下を見て目を合わせてくれなかった。 拒否されたと思った。 優太は、私のこと欲しくないのね。 真依子は彼氏に会うたびに頼み込まれたって言ってた。 好きだからしたいって。 怖いからやだって言ったのに色々言われて説得された。って 私は求めてすらもらえなかった。 好きな人に求めてもらえなかった。 悲惨…。 その後敢えて普通にされることが。 なかったことにされてるのが。 恥ずかしくて恥ずかしくて 泣きそうなのを必死で堪えた。
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